環境

J-クレジット制度とは?非化石証書との違いについて簡単に解説

環境関連のキーワードとして「J-クレジット」という言葉をご存じの方も多いと思います。政府目標である「2050年カーボンニュートラル」達成のために二酸化炭素(CO2)排出量削減への取組みが民間企業にも求められており、J-クレジット制度を利用してカーボン・オフセットをすることも削減目標達成の有効な手段です。

この記事では、J-クレジットについてその概要と活用事例、企業が導入するメリットについて簡単に解説します。同じようなCO2排出権取引の方法として「非化石証書」もありますが、その違いについても解説しますので、環境経営への取組みを進めている企業ご担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

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J-クレジット制度とは

J-クレジット制度とは、企業や自治体などの活動によるCO2の削減量や吸収量を証券化して市場取引ができるようにする制度です。制度は国が運営し、認証を実施しています。

J-クレジットの対象としては、下記の3つが挙げられます。

  • 省エネルギー設備の導入によるCO2の排出量削減
  • 再生可能エネルギーの利用によるCO2の排出量削減
  • 適切な森林管理によるCO2の吸収

J-クレジット制度により取引されたクレジットは、企業がカーボンニュートラル目標の達成のためのカーボン・オフセットとして利用するなど、様々な用途に活用できます。

続いてJ-クレジットの創出と購入の方法、それぞれのメリットについて解説します。

J-クレジットの創出

J-クレジット制度に登録するためには、CO2の削減や吸収のプロジェクトを立ち上げ、事務局の審査(https://japancredit.go.jp/application/flow/)を受ける必要があります。

J-クレジットの創出に関する申請は個人・法人、自治体を問わず可能ですが、審査が通りプロジェクトが実行された後も実測値を検証する必要があります。そのため、J-クレジットへの参加を検討される際には、スケジュール的な余裕を持たせておきましょう。

J-クレジットを創出するメリットには次のようなものがあります。

■クレジット売却による収入増

J-クレジット制度を利用して排出量を売却することによって、設備投資の一部をまかなうことが可能です。

新たな投資費用の原資にも活用できます。

■カーボンニュートラルへの取り組みに対するPR効果

CO2の排出削減や、森林保護によるCO2吸収事業を行うことで、環境貢献に積極的な企業や団体として広くPRすることができます。

■新たなネットワークの構築

J-クレジットの創出・売却を通じて生まれた他社や自治体とのネットワークを活用し、新たなビジネス機会の獲得や環境価値を付加したビジネスモデルの創出を促進します。

■組織内の意識改革・社内教育

J-クレジット制度に参加することで、自社内の環境経営の取組みが具体的な数値として示され、社員の意欲向上につながります。自社内から新たな環境貢献やCO2排出削減のアイディアが生み出されることも期待できるでしょう。

J-クレジットの購入

J-クレジットを購入し、企業や団体の活動によって発生するCO2をオフセットし、環境報告の数値を改善することが可能です。

J-クレジットを購入するには、下記の3つの方法があります。

  • J-クレジット仲介事業者(https://japancredit.go.jp/market/offset/)を通じての購入(購入価格は仲介事業者との相対取引で決定)
  • 「売り出しクレジット一覧(https://japancredit.go.jp/sale/)」掲示板を通じての直接購入(購入価格はクレジット保有者との相対取引で決定)
  • J-クレジット制度事務局が実施する入札販売(https://japancredit.go.jp/tender/)での購入(購入価格は入札による最高価格で決定)

J-クレジットを購入するメリットには次のようなものがあります。

■環境貢献企業としてのPR効果

J-クレジットの購入を通して、省エネや森林保全に取り組む環境経営のイメージをPRできます。

■企業の環境評価の向上・企業価値の向上

温対法や省エネ法などの報告、CDPやSBT、RE100への取組みにJ-クレジットのカーボン・オフセットを活用し、各種環境評価の数値を高めることが可能になります。機関投資家によるESG投資を呼び込むことにもつながり、企業価値の向上に貢献します。

参照:J-クレジット精度事務局HP クレジット種別による活用先一覧

■自社製品やサービスの環境ブランディング

製品の製造やサービスを提供するのに必要なCO2排出量をオフセットすることで、差別化・ブランディングができ、自社商品・サービスの競争力を高めることができます。特に一般消費者向けの製品やサービスは「エシカル消費」による販売促進も期待できます。

■新たなビジネス機会の獲得・環境ネットワークの構築

J-クレジットの購入を通じて生まれた他社や自治体とのネットワークを活用し、新たなビジネス機会の獲得や環境価値を付加したビジネスモデルの創出を促進します。サプライチェーン全体での排出量を削減するScope3の取組みにおいては、サプライチェーン企業から、脱炭素に積極的に取り組む企業として高い評価を受け、優先的に取引先として選定される可能性もあります。

J-クレジットと非化石証書との違い

J-クレジットと同様のカーボン・オフセット制度として「非化石証書」があります。原油やガス、石炭などの化石燃料を使用して発電した電力を「化石電源」と言い、太陽光やバイオマス、原子力など化石燃料によらないで発電した電力を「非化石電源」と言います。

非化石証書とは、その電力が「非化石電源」由来であることを発電事業者が証明するものです。

非化石証書は、FIT非化石証書と非FIT非化石証書の大きく2種類が存在します。FIT非化石証書は、小売電気事業者のみならず、需要家も購入が可能です。一方、非FIT非化石証書は、小売電気事業者のみの購入が可能です。需要家は、FIT非化石証書を直接調達する、あるいは電力会社が調達した非化石証書などの非化石価値を付与した環境メニューを契約することで、CO2を減らした電力を使用することができます。

非化石証書は、需要家が調達できる種類が限られますが、J-クレジットは個人・法人、自治体を問わず調達可能であることが大きな違いです。J-クレジットは転売も可能で、現時点では2031年3月末まで使用可能であり、非化石証書よりもJ-クレジットの方が扱いやすい側面があります。

J-クレジットの活用事例

J-クレジットを活用した取り組みについて、3つの実例をご紹介します。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社の活用事例

キヤノンマーケティングジャパン株式会社では、J-クレジットを活用してオフィス用の複合機の製造工程でのCO2排出削減量をカーボン・オフセットする取組みを実施しています。この仕組みの中では、製品使用時に発生するCO2削減量相当分を希望する顧客に移転することも可能です。移転されたオフセット分のCO2削減量は、顧客企業の削減量として活用が可能です。さらに、顧客企業が属する自治体が販売するクレジットとも紐付け、その地域のCO2削減活動への貢献につなげています。

参照:キヤノンのカーボン・オフセットの取り組み

高知市の小中学校空調設備整備事業での活用事例

高知市では、高知市内の小中学校空調設備整備事業で発生するCO2をカーボン・オフセットしました。高知市内の小中学校50校の空調設備を整備するにあたり、環境に配慮した工事とするため、工事車両や重機の燃料使用に伴い発生するCO2発生量を算定し、相当量のJ-クレジットを購入するという仕組みです。J-クレジットは、高知市内の商店街より創出されたものを活用し、環境価値の地産地消を実現しました。

参照:高知市の小中学校空調設備整備事業でのカーボン・オフセット

株式会社カイハツの活用事例

建設コンサルタントの株式会社カイハツは、2021年度の事業活動に伴う社有車のガソリン使用および事務所電力使用において発生するCO2排出量をカーボン・オフセットし、地球温暖化対策としてのCO2削減に貢献しました。地元の出雲市内の住宅太陽光発電設備導入によるCO2削減事業が創出したJ-クレジットを活用することで、環境価値の地産地消を実現しました。

参照:株式会社カイハツにおける事業活動のカーボン・オフセット

まとめ

ここまで、J-クレジットの概要と、企業がJ-クレジットを事業活動に取り入れるメリットについて解説してきました。政府目標である、2030年にCO2 46%減(2013年比)、2050年にカーボンニュートラルの達成に向けて、CO2排出量の削減が急務となっています。今後の事業活動においては、CO2排出量削減への取り組みが必須となって行くでしょう。J-クレジット制度を利用したカーボン・オフセットの活用は、そのための有効な手段となります。

プロレド・パートナーズでは、企業の環境経営の取り組みについてもコンサルティングを承ります。CO2排出量削減への取り組みや再生可能エネルギーの導入についての検討の際には、プロレド・パートナーズへお気軽にご相談ください。

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