施設管理費のコスト削減術

施設管理費は人件費に起因することが多く、最近の人手不足から増大傾向にあります。施設管理業務とは、日常清掃、警備、昇降機保守点検、受変電設備保守点検、消防設備保守点検、受水槽清掃、グリストラップ清掃などのことを指します。ここでは、施設管理費のコスト削減手法をご紹介します。

当社が過去に手掛けた全国展開されている小売チェーンや飲食チェーン、ホテルチェーンのお客さまの例でも、毎年リバースオークション(相見積もり)を実施し、施設管理費削減に積極的であるにもかかわらず、サプライヤーからの値上げの要望が後を絶たず、それに応じざるを得ないケースがありました。

しかし、下記のようなケースは、適切なアプローチを行うことで、さらなるコスト削減が可能となります。

〈Case1〉 コスト削減手法をリバースオークション(相見積もり)のみに依存している。
〈Case2〉 各拠点の委託業務の契約や仕様内容、料金単価を本社が把握できていない。
〈Case3〉 施設管理担当者とサプライヤーが蜜月関係で、長年見直しが行なわれていない。

こういったケースは、コスト削減を進める際に、特に障壁となりやすい課題です。

『ビルメンテナンス情報年鑑2018年』によると、施設管理費のコスト構成は人件費率が80%超です。ゆえに、施設管理業務は労働集約型ビジネスであり、人件費水準に影響を受けやすいと言えます。最低賃金の推移をみると、年々上昇しており、今後もその傾向は続くと予想されます。こうした背景から、施設管理費は増加傾向にあり、単純な単価の削減はますます困難になりつつあります。

そこで、多くの企業では実践できていないアプローチについて紹介します。

サプライヤー見直し

サプライヤーの見直しは、現場担当者でもある程度取り組まれていることでしょう。ここでは、単なる相見積もりに留まらず、もう一歩踏み込んで、他社とのベンチマークや適正な市場価格を把握し、必要に応じてサプライヤーの変更まで踏み込みます。また、一度で終わらず継続的に取り組むことで、取引先との間に緊張感が生まれ、一定以上の削減効果が期待できます。

施設管理業務にてサプライヤーの見直しが進まない理由として、取引先のサプライヤーが現場担当者と深い関係を築き、長年同じやり方で見直しが行なわれない傾向があることが挙げられます。さらに、現場担当者が当初の契約外の追加業務まで依頼していることもあり、現場担当者にとっては“使いやすい/無理も聞いてくれる業者” になっていることから、本社主導でサプライヤーの見直しを推進しようとしても、現場から強い反発を受けかねません。

サプライヤーの見直しには、次の2点が重要です。

1.サプライヤー変更によるコストメリットと変更作業に伴うコスト(手間や投資)を定量的に比較し、経営視点で意思決定

2.契約内容外の業務が発生していないか確認し、新規サプライヤーへの変更後に発生する現場混乱のリスクを低減

そのうえで、サプライヤー見直しによるコストメリットを現場に丁寧に説明し、本社主導でサプライヤーの変更を断行していく必要があります。

拠点間の契約条件や仕様の統一

一つの業務について委託金額、サプライヤー、業務仕様といった点で社内情報の比較を行ない統一することで、改善の余地がないか検討するアプローチです。全国展開されている小売チェーンや飲食チェーン、ホテルチェーンの中には、そもそも各拠点情報をまとめたこと自体がなく、各拠点が各業務にどれだけの予算を計上しているかさえ把握できていないことが多い現状があります。ポイントは、仕様を一覧に落とし込み比較し、ばらつきを把握することです。

拠点の模範事例を特定し全社横断的に展開

取り組みの難易度が上がりますが、ある拠点における模範事例を特定し、その共有を推進することで、全社的なコスト削減を実現します。全社単位の情報整理を進める中で、拠点間で委託範囲に違いや、委託金額の乖離が判明する場合があります。拠点間の施設管理業務に対する知見の差が、根本的な原因の場合もあるので、現場からの声を汲み取るという作業も大切にしてください。

機械化・ロボット導入を活用

最後は、機械化やロボット導入によるBPR(業務改善やその再設計)です。自社単独での施設管理業務の業務改善は難しいですが、サプライヤーと協力関係を構築し、協働で業務効率化、コスト削減ができる可能性があります。施設管理業務の中でも、日常清掃、人的警備などは、資機材の進化、業務の機械化などイノベーションが盛んであることから業務プロセスの改善可能性が高い領域であるので、是非既存サプライヤーへ相談してみてはいかがでしょうか。注意点としては、日常清掃、人的警備のコスト構成として人件費率が高いという特徴があるため、単純な単価の見直し要請では逆に値上げ要望を受ける可能性があります。

施設管理費にはさまざまな業務が内包されていますが、基本的な削減アプローチは、「現状分析」→「削減アプローチの策定」→「実行」→「定着化」です。各業務内容に適したアプローチが存在するので、自社にて取り組むことに難しさを感じた場合には、客観的な立場で専門家やコンサルティング会社に、アドバイスを求めるのも有用な手段の一つです。

対象としては、施設を保有する企業様であり、店舗やホテル、オフィスビル、物流施設、学校や病院などが挙げられます。

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