ガス料金のコスト削減術

ガス料金は、小売り自由化の影響で、専門的な観点から改めて見直すと、すでに取り組みをされている方でも、さらに大きく(最大▲30%)コスト削減できる可能性を秘めています。ガス料金を取り巻く環境の現状と、その上で、コスト削減の具体的なポイントをご紹介します。

ガスを取り巻く環境の今

電力・ガスの小売り自由化は規模の大きい需要家から段階的に進められてきました。電力は2016年、ガスは2017年にすべての需要家が自由に電力会社・ガス会社を選択できるようになりました。日本の一般的な都市ガス料金は海外の主要国と比較してもまだまだ高い水準にあり、米国と比較すると2倍近い開きがあります。

※主要国間での産業用都市ガス料金比較(日本を100とした場合)
 日本:100 ⇔米国:35、英国:63、ドイツ:70(経済産業省 エネルギー白書2019より)。

都市ガスは全面自由化により、使用量に関わらず、ガス会社以外の企業を選択することが可能になり、企業間の競争により料金水準の低下やサービスの向上が見込まれています。競争によって、需要家にとってはコスト削減がしやすい環境へと変化し、コスト削減のチャンスといえます。需要家の多い関東・関西では競争が進んでおり、上手に価格交渉を行うことで大幅な削減が見込めます。また、中部や九州でも競争環境が生まれつつあります。

LPガスと都市ガスの違い

ガス料金のコスト削減では、まずLPガスと都市ガスの違いを押さえておく必要があります。一般的にLPガスのほうが料金単価は高くなりますが、エネルギー効率が高いため、使用量は都市ガスのおおよそ半分になります。また、LPガスは初期費用をガス会社が負担することがほとんどですが、都市ガスでは初期費用として導管の引き込み工事費が発生します。

● LPガス

 LPガスは敷地内にボンベを設置する必要がありますが、地中の導管を使用する都市ガスに比べ、災害時の復帰が早いというメリットがあります。

LPガスでは、ほとんどの地域で複数の事業者を比較しての選択、価格交渉を行うことが可能ですが、使用する時間帯により単価が変わるような多様な料金プランはありません。ただし、従量料金について単価が固定制の場合と変動制の場合があります。契約期間を通して単価が毎月一定の固定制に対して、LPガスの輸入価格や為替などに連動して単価が毎月変動するのが変動制となります。固定制に比べ、変動制の方が原価とガス会社経費の内訳が明確で、料金の妥当性を確認しやすいというメリットがあります。

● 都市ガス

 都市ガスでは、使用する設備や時間帯・季節に応じて料金の異なる複数のプランが用意されています。現在のプランが最適なものになっているか定期的に検証することが大切です。また前述の通り、都市ガスは2017年の全面自由化により、従来のガス会社以外を選択することが可能となりました。企業間の競争により、料金水準の低下やサービスの向上が見込まれています。 

ガス料金 コスト削減のポイント

ポイントは「単価」の削減と「使用量」の削減です。料金構成要素は基本的に単価×量です。単価の削減は、「運用の改善」「設備投資」がともに不要なため、実はもっとも着手しやすい領域です。なおかつ最短で翌月から効果が現れるうえに、効果自体も大きい場合が多いです。ここでは、ガス料金「単価」削減の、具体的なポイントをご紹介します。

1.現在の契約内容の確認と見直し

まずは請求書、契約書から、自施設のガス契約内容を確認してみましょう。不明確な点があれば事業者に問い合わせてください。確認する主なポイントは、次の4点です。

  1. 直近12ヶ月分のガス使用量、請求金額
  2.  ガス料金の計算体系
  3.  契約期間
  4.  契約解除の条件

2.他のガス会社との相見積もり

現在の契約内容が確認できたら、自施設所在エリアで、新規ガス会社に見積依頼をします。所在エリアで供給可能なガス会社から見積もりを取得し、比較検討しましょう。

ガス会社ごとに、料金体系が異なる場合もあるため、単価を確認するだけではなく、過去のガス使用量実績に当てはめて検証することで、より精緻に検証することが出来ます。検証した内容を基に、既存ガス会社とも交渉を行い、既存のガス会社との契約改定、もしくは他社への切替えを決定しましょう。

ガス会社の切替えを検討する場合には、既存のガス会社との関係性をしっかりと確認する必要があります。特に、LPガス会社は、地元に根付いた企業が多いため、単純に価格だけで判断するのではなく、今後の事業への影響も試算したうえで行うことが重要です。

3.LPガス⇔都市ガス間の切替え

LPガスから料金の安い都市ガスに切り替えることも一手です。初期費用として導管の引き込み工事費が発生しますが、長期的な視点でガス料金のコスト削減ができます。

4.一括契約への変更

同一施設内に、複数の契約がある場合、ガス会社への提案によって、一つにまとめることで、 スケールメリットにより、基本料金・従量料金の単価を下げることができます。一歩踏み込んだ、ガス料金のコスト削減に取り組んでみてはいかがでしょうか。

弊社では、専門家による交渉で、各クライアント様の事例で、平均10~20%、中には30%近くのガス料金のコスト削減が実現しております。対象としては工場(食品メーカー、製薬メーカー、金属メーカー)や飲食(レストラン、中華料理店、ファストフード)だけではなく、ガス空調を導入している企業様もガスを多く使用する業態です。

低圧分野では、電力会社が需要家ごとに個別の料金プランを設定するのではなく、あらかじめ定められた料金プランから最適なものを選択することになります。また、インターネットを介して見積りを取得する方法が一般的です。数社の見積りをまとめて比較できるサイトもあります。

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