調達品自体の見直しでは、モノ自体を見直すことでコスト削減を図ります。
具体的には、品質/グレードは適正かどうか(オーバースペックではないか)、より安価な代替品で目的達成ができないか、同等品にも関わらず拠点ごとに多品種調達しているものはないか(調達品を統一することによるボリュームメリットを出せないか)、購入ではなく内製化した方が安価ではないか、という点を検討していきます。
✔背景
某設備会社では、ターボ冷凍機の購入単価の取決めを各購買担当者が個人で実施しており、発注実績データは蓄積していたが、
大量多種のため有効活用ができず、協議が属人化していた。
✔課題
蓄積した発注実績データを有効活用することで属人化した協議から脱却、ベストプライスでの安定した購買の実現。
✔アプローチ
陳腐化したデータを整理し、適切なコストドライバーを設定。
一定の傾向が確認できたため、コストドライバーである形式冷凍トンを基準 としたコストテーブルを整備し、
それに基づく購買を行うようにした。
✔見直しのポイント
適切なコストドライバーを設定できるかがカギとなる。一見、根拠なくばらついているように見える発注実績データも、一度陳腐化したデータを整理し傾向を見てみることが重要。
また、同一サプライヤー内で単価がばらついている場合には単価差の要因をサプライヤーにヒアリングするのも効果的。
✔背景
某ハウスメーカーでは、住設機器のメーカー集約が営業上不可能であったため、
調達価格(掛率)の協議を積極的に行っていなかった。
✔課題
取引量以外の要素での協議の実施による調達価格(掛率)の適正化。
✔アプローチ
オペレーション部分の改善によるコスト削減を取引先へ提案。
ヒアリングにより、納品時の制約が取引先のネックとなっていたことが発覚したため、
納品時間の緩和と納品場所の変更によりコスト削減を実現した。
✔見直しのポイント
住設機器の調達価格(掛率)は、取引量に応じて決定される基準となる掛率に、
取引量以外の要素(最新製品⇔型落ち製品、通常製品⇔キャンペーン製品、都度発注⇔まとめて発注、発注ロット少⇔多、
納品時間の制約多⇔少、納品場所分散⇔集約、配送距離長⇔短、在庫保有不可⇔可、など)を考慮して最終的に決まるため、
取引量の変更が難しい場合でも、その他の条件を見直すことで、調達価格(掛率)適正化の余地がある。
集約方法としては、以下3点があります。
対応可能エリアや取引可能数量・品目を取引先にヒアリングし検討を進めていくとよいでしょう。
全体最適な購買を実現するためのポイントとして、配送費が高額な調達品などは支店・現場毎に購入した方がトータルコストが安くなる場合もあるため、一律に集中購買を目指すのではなく、全体のコストを見ながら 「集中購買に向いているもの」 と 「支店・現場別購買に向いているもの」 を選別していくようにしましょう。
集中購買は取引先にとってもメリットが大きく協議に応じてくれやすいアプローチであるため、取引先へも積極的に相談しながら検討していくとよいでしょう。
✔背景
某建設会社では、購買を現場別に実施しており、会社全体としてのスケールメリットを生かした協議ができておらず、
単品発注単価での購買となっていた。
✔課題
全社集中購買によるボリュームディスカウントの実現。
✔アプローチ
現場別に購買していた主要機材の一斉点検を行い、一部に集中購買を導入。
一律で集中購買を目指すのではなく、モデルエリアを選定して、現場別に購買に向いている調達品を選定しながら、
現場にとってQCD(品質・コスト・納期)よく、無理のない調達方法を模索したことで、全体最適な購買を短期で実現した。
✔見直しのポイント
一律に集中購買を目指すのではなく、「集中購買に適した調達品」 と 「現場別購買に適した調達品」 を選別したことがポイント。
また、コスト面だけでなく、品質・納期等現場でのオペレーションを考慮することが全体最適を目指す上で重要となる。
これらを解決するためには2点①サプライヤーの寡占度と➁自社へのビジネス依存度を考慮します。
①サプライヤーの寡占度
対応可能なサプライヤーが多いほど、自社の協議力は上がります。
現在サプライヤーが寡占となっている場合には、対応可能なサプライヤーを増やす必要があります。
対応可能なサプライヤーを増やすための主要な方法は次の3点です。
②自社へのビジネスの依存度
自社へのビジネスの依存度が高い企業(一般的には売上規模が小さい企業の方が、取引量が同じ場合には依存度が高くなる)ほど、
競争環境は有効に働き価格協議が自社にとって有利に行える傾向にあります。
自社への売上依存度が高いにも関わらず、取引量が少ないサプライヤーに対し、取引量コントロール(自社への依存度が低い企業からの一部シフト)を実施することで、自社への売上依存度が低い企業の取引量を増やした場合よりも、ボリュームディスカウントの幅が大きくなる可能性があります。
これら2点を考慮し、図の右下の領域に可能な限り近づくことで、効果的にコスト削減を実現することができます。
①商流構成の選定ポイント
メーカーとの直接取引の方が中間会社の利益がかからない分、安価になりやすい一方で、規模の大きい中間会社を介することで、
中間会社のボリュームディスカウントにより、メーカー直接取引よりも安価になる可能性があります。
そのため、メーカーとの直接取引か、商社や卸などの中間会社を通すかは比較検討が有効です。
ただし、住設機器などは、商流に関わらず販売価格をメーカー側が決定しており、商流の変更が価格に影響を及ぼさないため、
自社への販売価格の決定権がメーカー側にあるのかどうかは把握しておく必要があります。
➁協議相手の選定ポイント
商流上のどのプレーヤー×事業所×人と協議をするかによっても価格は変わってきます。
踏み込んだ価格を出してもらうためには販売価格の決定権のあるプレーヤー×事業所×人と協議を行うことが有効です。
プレーヤー
調達品やメーカーによって、販売価格をメーカーが決定しているか、実際の取引企業が決定しているかが異なるため、
これまでやり取りやヒアリング等で販売価格を決定しているプレーヤーを見極め、販売価格を決定しているプレーヤーと協議を行うようにします。一般的に、住設機器やサッシ等はメーカーが販売価格を決めていることが多く、副資材等は販売会社が販売価格を決めていることが多くなっています。
事業所
複数エリアで取引をしている場合、本社相手に全体ボリュームにて協議を行うのが効果的です。また、1エリアでの取引の場合でも、踏み込んだ価格の決定権は本社にあることが多いため、本社とのやり取りがよいでしょう。
人
可能な限り、裁量の大きい上席の方とのやり取りが温度感も直接伝わるため好ましいです。また、話が担当者止まりになることを防ぐために、会社宛てに書面にて協議依頼をすることも有効です。
建材の商流上には複数のプレーヤーが存在することが多く非常に複雑ですが、商流の変更や、価格協議先の変更など、複雑である分、検討余地があるポイントともいえます。一度取り組んでみるとよいでしょう。