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倉庫/物流センターの生産性改善プロジェクト(前編) 「ゴール設定」から「プロジェクト体制の立上げ」まで


目次[非表示]

  1. 1.ゴール設定
    1. 1.1.解決したい課題とプロジェクト・ゴールはシンプルに!
    2. 1.2.ゴールを細分化し、"定量化されたKPI"と"責任者"を決める
      1. 1.2.1.定量化されたKPI管理
      2. 1.2.2.責任者を明確化
  2. 2.プロジェクト体制
    1. 2.1.他部門(IT/営業/経理/人事)の巻き込みで進捗を加速せよ!
  3. 3.物流改善におけるプロジェクト・マネージャーの仕事は3つ
    1. 3.1.経営陣の巻き込み
    2. 3.2.プロジェクトにおける課題解決
    3. 3.3.現場リーダーへの積極支援

ゴール設定

物流現場の生産性改善

解決したい課題とプロジェクト・ゴールはシンプルに!


倉庫/物流センターの生産性改善において、最初にすべきことは「ゴール設定」です。
「ゴール設定」はステアリングコミッティ(社長や担当役員)や倉庫/物流センター内スタッフに対する、約束であり合意事項となります。

ゴールの達成に必要となる「解決すべき課題」も明確にします(下表を参照)。

”課題”とは、言い換えると”なぜ、プロジェクトに着手するのか?”の背景・理由とも言えます。
課題設定において注意すべきは、改善の方向性(コスト削減/作業品質/効率化等)を絞り込むことです。"課題"を複数把握している場合でも、優先順位をつけて最重要課題に絞り込んだ上で、プロジェクトに着手します。


一方で、対象外となった他の課題に関しては、今後別の改善プロジェクトとして対応していく必要があります。1つのプロジェクトに対して課題設定がシンプルでないと、ゴールも絞り込めません。ゴールは、何を優先して取り組み、何を対象外にするかの判断基準となります。


倉庫/物流センターの生産性改善プロジェクトにおけるゴール設定(例)
解決すべき課題
ゴール設定
設定の粒度
1.運営人件費を削減したい
▲10%~▲20%程度削減
粗い
2.処理間違いを低減したい
誤ピッキング:1ppm以下
細かい
3.サービスレベルを向上したい
出荷リードタイム:24時間以内
細かい
4.保管スペースが不足している
保管効率:10%向上
細かい
5.作業品質を向上したい
誤作業の発生率を半減以下
粗い


ここでは社内関係者が「ゴール設定」の内容を見たときに、なんとなくイメージが湧く程度で問題ありません。

ゴール設定の難易度によりますが、通常は短期間ですんなりと達成できません。
初回のプロジェクトで到達できなくても、一旦仕切り直した上で、次のプロジェクトで達成を狙えばよいのです。プロジェクト着手前からゴール設定の難易度が高いか低いかで悩むより、「本来はこうあるべき」という理想像を持ってゴールを設定しましょう。

ゴール設定によって、改善の「対象」と「アプローチ」も決まります。
”コスト削減”と”品質改善”のように目的の性質が異なれば、対象の絞り方や現状把握の方法も変わってきます。
例えば、コスト削減「運営人件費:▲10%削減」という目的に関しては、運営人件費の中で大きな割合を占める業務(ピッキング作業等)を、コスト明細より抽出することから着手します。


一方、品質改善「誤ピッキング:1ppm以下」が目的の場合は、現場でのピッキング作業の分析、出荷データのトレンド分析、ピッキングスタッフの熟練度分析などから着手します。

また、「ゴールを何にすべきか?」「その上で解決すべき課題は?」の検討段階からプロジェクトの想定メンバーを巻き込むことで、高いコミットメントやモチベーションを引き出せます。


ゴールを細分化し、"定量化されたKPI"と"責任者"を決める

物流現場の生産性改善


プロジェクト・ゴールは、更に細分化された“チーム・ゴール”に落とし込みます(下表参照)。

“チーム・ゴール”とはプロジェクト・ゴールを達成するために、何をどう改善していくかをより具体化したものであり、「定量化されたKPI(Key Performance Indicator、主要業績指標)」で表現できる目標と、その達成に向けた施策の「責任者」を取り決めます。

チーム・ゴールの設定(例)
プロジェクト・ゴール
チーム・ゴール
責任者(リーダー)

物流コスト:10%削減

ピッキング生産性を10%改善
(ピッキング動線を20%短縮)
Aさん
ピッキング生産性を10%改善
(動線短縮以外で10%の時短)
Cさん
倉庫スタッフの投入余剰割合を10%削減
Rさん


チーム・ゴールを設定する上で、押さえるべきポイントは下記の2点です。

定量化されたKPI管理

各施策の進捗状況をKPI管理する必要があるため、チーム・ゴールも定量的に管理できるKPIを設定します。KPI管理では、週次で改善度合いを測定し、現在の改善状況とゴール基準との乖離を明確にします。測定結果や進捗状況はプロジェクトの定例MTGだけでなく、倉庫/物流センター内への掲示等も行い、作業者や関係者全員と共有します。


責任者を明確化

各施策やアクション計画が綿密に作成されていたとしても、責任者が不明確なままでは予定通りに施策が推進していきません。チーム・ゴール達成のための責任者を決め、個別の細かなタスクやアクションに関しても、常に"担当者"と"完了期限"を明確にしましょう。

改善活動にはスピード感が重要なため、新たな課題が見つかり、施策が必要な場合は、1週間以内に実行可能なアクションプランへ落とし込みます。
当面の課題や実施すべきアクションは、現場に設置するホワイトボードにも記載し、倉庫/物流センター内作業者へも共有します。


プロジェクト体制

物流現場の生産性改善

他部門(IT/営業/経理/人事)の巻き込みで進捗を加速せよ!


プロジェクト・ゴール達成のために、関連する他部門の担当者を巻き込んでおくことが重要です(下表参照)。
ゴールを設定した時点で、他部門からのメンバー招集のために、ステアリングコミッティ(社長や役員陣)の理解と合意を得ましょう。


プロジェクト・ゴールの種類によって関連する部署
プロジェクト・ゴール
物流以外の関連する部署
1.物流コスト:▲10%削減
経理、IT
2.誤ピッキング:1ppm以下
人事、IT
3.出荷リードタイム:24時間以内
営業(マーケティング)、IT


物流コスト:▲10%削減

経理担当がメンバーに加わることで、支払い費用の仕分け集計を詳細に実施でき、必要な投資に対する申請作業も円滑になります。
現場の作業生産性の向上のために、PCやスキャナなど事務機器の増強も相談できます。

誤ピッキング:1ppm以下

生産性や品質の改善において、現場リーダー及び事務員の増員や採用、トレーニングプログラムの設計など、人事部の協力がなくては解決できない課題も少なくありません。

出荷リードタイム:24時間以内

営業メンバーの参加により、顧客ニーズの理解が深まります。
出荷オーダーの頻度など妥協できるサービス基準の見極めが可能となるため、改善活動に欠かせない条件を早期に把握できます。


加えて、それぞれのテーマに横断的に関連してくるのがIT担当者です。
受注から納品までのリードタイム短縮といったサプライチェーン改善から、倉庫/物流センター内の生産性改善まで、ITシステムと切り離して考えることはできません。


例えば、誤ピッキングの原因が「商品コードの文字が小さいこと」に一因があった場合、IT担当者と連携することで、下記のメリットがあります。

①    現状の文字が小さい理由と、文字を大きくした場合の影響がすぐに分かる
②    システムを改修する場合の投資金額と改修に必要な期間が想定できる
③    システム改修依頼から現場対応までのやり取りをスムーズに遂行できる


他部門のメンバーが物流プロジェクトに参画することは稀かもしれませんが、協力が必要な局面は少なくありません。
さらに、他部署を巻き込んだ取り組みは、経営上の優先順位が高いと認識されるため、関連メンバーのモチベーションも高まります。


物流改善におけるプロジェクト・マネージャーの仕事は3つ

経営陣の巻き込み、課題解決、現場リーダーへの積極支援

物流現場の生産性向上


物流改善に向けたチームを組成する場合、まずは倉庫/物流センターの現場リーダーや事務担当からチーム・リーダーを任命し、現場作業者から数名をプロジェクト・メンバーとして選出します。あらかじめ設定されたゴール設定ごとに、担当するチームとその責任者を決めていきます。

例えば、『物流コスト:▲10%削減』がゴールとなる場合、そこから細分化されたチーム・ゴールに紐付いて「入荷作業」「出荷作業」「保管」といったセクション別のチームをにします。
同様に『出荷作業コストを▲10%削減』といったゴールの場合は、「ピッキング」「出荷検品」といったチーム分けが一般的です。

ピッキングという一つの工程であっても、その中に複数のゴールと解決すべき課題があるなら、更に「ピッキングA」「ピッキングB」のようにチームを分割します。
例えば、「ピッキングA」はピッキング作業時の動線短縮を担当、「ピッキングB」はそれ以外のロケーション・該当商品を探す工程やスキャン工程を担当、などのように各チームのミッションを明確にします。各チームは個別の絞り込まれた課題にフォーカスすることで、解決に向けたPDCA(Plan/Do/Check/Action)サイクルを加速できます。

次に、プロジェクトの要であるプロジェクト・マネージャー(以下、PM)とプロジェクト・マネジメント・オフィス(以下、PMO)について説明します。
一般的にPMは当該プロジェクトの実務上の責任者を指し、メンバーをマネジメントすることに加えて、経営陣への説明責任を負います。
また、PMOの役割はほぼPMと同義ですが、PM担当者が個人としてプロジェクトをマネジメントし切れない場合、組織やチームとしてその役割を担うのがPMOであり、PMの“下部組織”または“サポート役”として機能します。


物流改善プロジェクトでのプロジェクト・マネージャーの主な役割は以下となります。


経営陣の巻き込み

プロジェクト・ゴールと全体スケジュールを元に、経営陣やプロジェクト・メンバーと合意形成を行います。早期に合意形成することで、プロジェクトに対する認識の相違や意見の食い違いを最小限にできます。
特に経営陣との合意形成が重要なので、会議体の設定や報告資料の作成など事前準備を行い、現状の課題からゴール設定までの一貫した内容を理解してもらいます。

例えば、「出荷リードタイムの短縮」をゴールとした場合、プロジェクトの進行中に経営陣から別途「コスト削減」などの追加要請が発生し、現場が混乱しかねません。当初のミッションから逸脱しないためにも、現状のゴールを設定するに至った経緯や優先順位付けの根拠などを共有し、適切な支援を得るようにします。

また、重要な課題や進捗が発生した場合は、定例会を待たずに、直接経営陣へ報告/共有を行います。
プロジェクトテーマの責任を担う経営層(物流担当役員など)に対しては、定例会の目的やアジェンダに関して事前相談を行い、常に後方支援を得られる状態にしておきましょう。


プロジェクトにおける課題解決

全体スケジュールとアクションプランに対する課題(遅延や想定外の事案発生など)の解決もPMの仕事です。追加でデータ分析や現地調査などが必要な場合は、チーム・リーダーや現場メンバーと協力します。特に他部門との連携には、「1.経営陣の巻き込み」と合わせて、PMが中心的な役割を担います。

課題解決のポイントは早期発見です。そのために、チーム・リーダーなどの主要メンバーとは高い頻度でコミュニケーションをとり、現状把握を怠らないことです。
週に1回~2回の定例会開催だけでは十分と言えません。
各チーム・リーダーとは毎日、倉庫内の改善状況、倉庫作業者の動きなどを確認し、プロジェクトの計画に対する進捗と現状の課題をリアルタイムで把握していきます。


現場リーダーへの積極支援

物流現場の生産性改善

物流改善プロジェクトでは、現場の作業者の中からチーム・リーダーを選出することもあります。チーム・リーダーはそれぞれ得手⇔不得意な分野があり、特に不得手なテーマに関してはPMからの積極的な支援が必要となります。


PMからチーム・リーダーへの支援事例

Ⅰ.定例会や報告会用の資料作成(パワーポイントやExcel)
Ⅱ.科会などの会議における議事進行役
Ⅲ.各種データ分析(ExcelやAccess、専用の分析ツール等)

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このようにPMは幅広い業務を担いますが、システム開発案件などと比較すると、物流改善は現地現物で進めるため複雑性が低く、進捗管理にかかる時間も限定的です。
したがって、現場の各分科会(意見交換や課題検討などが目的)へも積極的に参加し、課題解決をサポートしていきましょう。
PMが分科会に参加する際は、"チーム・リーダーのサポート役"としての議事進行役に徹するなど、各メンバーが推進し易い環境づくりを心がけます。


PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)について、プロジェクトの進捗管理や調整というより、データ分析や現場調査など課題解決面のサポートを中心的な機能として位置づけることで、プロジェクトの推進が円滑になります。
PMは多くの時間を現場とのコミュニケーションに割く必要があるため、データ分析などの作業時間の確保が難しくなります。そのため、PMOへはデータ分析を得意とするメンバーなどを配置することも有効です。



*本コラム内の用語
KPI(Key Performance Indicator)=目標に対する評価指標
PDCA(Plan Do Check Act)=計画、実行、評価、改善というプロセスのサイクル
PM(Project manager)=プロジェクトをゴールへ導くためのマネジメントと管理を行う
PMO=進捗(工程)管理などPM業務に対し詳細なサポートを行う
PMBOK=プロジェクト・マネジメントの知識を体系化したもの
ppm(Point per million)=100万個(回)当たりの発生個(回)数
SKU(Stock keeping unit)=倉庫内で管理すべき最小管理アイテム単位
WMS(Warehouse management system)=倉庫管理システム
ステアリングコミッティ=利害関係者又は関係者が参加する会議体(経営層などを指すことが多い)


本コラム執筆コンサルタント

遠藤 昌矢
遠藤 昌矢

株式会社プロレド・パートナーズ 取締役  Booz&Company(現 PwC Strategy&)にて9年間コンサルティングに従事、その後DeNAで4年間勤務した後、プロレド・パートナーズに参画。 中期経営戦略や海外市場参入戦略立案、新規事業立ち上げ、M&A支援、R&Dテーマ選定などの幅広いコンサルティング経験を有する。京都大学理学部、同大学院卒。

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