物流急増中の”宅配便”の攻略法

物流急増中の“宅配便”の攻略法

宅配便については以前、別コラムの「配送モードの種類とそれぞれの特徴」でも詳細にお話しましたので、今回は、別の角度からお話をしたいと思います。宅配便については、学生や物流に馴染みのない方も興味をお持ちの方が多いと思いますので、色々なお話ができればと思います。


  配送モードの種類とそれぞれの特徴 「配送モード」という言葉をご存じでしょうか。この言葉は貨物を輸送する際の方法を意味します。この記事では、用途の違いという観点から分類した配送モードの種類とそれぞれの特徴についてご説明します。 株式会社プロレド・パートナーズ


目次[非表示]

  1. 1.宅配便の歴史はまだ45年程度
  2. 2.宅急便を開始した初日の荷物数はたった11個 
  3. 3.現場社員の着想で実現した「スキー宅急便」と「ゴルフ宅急便」
  4. 4.日本に流通革命を起こした「クール宅急便」
  5. 5.貨物追跡サービスもヤマトの宅配便がスタート
  6. 6.EC時代に顧客の細かなニーズに対応し、宅配サービスは更に多様化
  7. 7.宅配便の料金は、「サイズ」✕「発着地」で決まる
  8. 8.全国どこでも、翌々日までには配達できる仕組みとは?
  9. 9.翌日配送分の集荷時間のデッドラインは16時~18時頃
  10. 10.“宅配クライシス” は “明日の我が身”
  11. 11.宅配便の進化は止まらない
  12. 12.越境ECまで視野に入れた物流体制が必要
  13. 13.アマゾン、楽天、メルカリなどのメガ流通企業が第4の宅配便業者として出現
  14. 14.まとめ

皆さんが日常生活をおくる上で「物流」といわれると、一瞬、思案するかもしれませんが、「宅配便」と言われるとすぐにイメージができますよね。それぐらい宅配便は日常生活に密着したサービスであり、もはや社会インフラといって差し支えないと思います。その証拠に街中を歩いていると1日中、宅配便の車両とドライバーが走っている姿を見かけます。もし、宅配便がストップしてしまったら...。日本の経済活動に大きなダメージが生じることは想像に難くありません。


宅配便の歴史はまだ45年程度

宅配便の始まりは、大和運輸(現ヤマト運輸)が1976年に開始した「宅急便」です。ヤマト運輸は元々、東京の京橋が発祥で、百貨店の三越が扱う荷物を東京近郊に配送する運送会社でした。その後、*¹路線事業を開始し、関東一円にネットワークを有する運送会社となります。

しかしながら、東京オリンピック開催後、日本国内も急速に高速道路が整備され始め、ライバルが次々と出現しはじめました。極めつけは1973年のオイルショックであり、これによりヤマト運輸は深刻な経営危機に陥ります。そんな時、経営者の*²小倉昌男氏は小口配送に注目し、「宅急便」サービスを若手社員とともに立ち上げます。1976年1月のことでした。

当時の小口配送は郵便局(現日本郵便)と日本国有鉄道(以下国鉄、現JR各社)の2社が担っていました。筆者も、段ボールに縄をつけて十字に縛り、短冊型の荷札を縛り付けて、駅に持ち込んだ記憶がおぼろげにあります。田舎では近隣に郵便局しかないので、郵便局で計量をして荷物を発送していました。どちらもリードタイムは長く、いつ到着するのかも正確にはわからないという状況でした。また、2社の輸送サービスはお世辞にも良いとは言い難く、「荷物が無事届けば、まあ良し」程度のレベルでした。

1970年代には国鉄内の労働組合闘争が激しくなり、国鉄の小口配送サービスに対する信頼は失墜、ヤマト運輸が提供する宅急便がとって変わることになります。その後、1986年に国鉄の小口貨物サービスは民営化とともに幕を閉じることになります。筆者の記憶もこのあたりから変わってきます。小口貨物を送る場合は、近所の酒屋や食料品店に持ち込む様になりました。その後、1998年に佐川急便が宅配便事業に参入します。佐川急便が宅配便事業に関しては新規参入者であることはちょっと意外に思えますね。

ちなみに、郵便局の小包事業は1892年(明治25年)から行われており、小口配送では最も古いサービスです。1983年から「ゆうパック」という名の包装材が誕生し、1987年からはサービス自体の名称になりました。


宅急便を開始した初日の荷物数はたった11個 

ヤマト運輸が現在取り扱っている荷物数量はどれぐらいだと思いますか?

答えは年間21億個(2021年3月期実績)で、日当たり平均でいうと570万個となります。ちなみにヤマト運輸が宅急便を開始した初日の取り扱い荷物数はたったの11個でした。45年間に渡る関係者の方々の努力に頭が下がる思いです。

宅配便(陸送)全体になると、取扱物量は47.9億個(令和2年実績)で、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社で全体シェアの94.8%を占めています。宅配便市場の物量は年々増加しており、前年と比較しても11.9%も増加しています。これは、コロナによる巣篭もり需要の影響が若干あったとしても、ECの販売量増加が主要因であることは間違いありません。今では生鮮品や食品、日用品もECで購入できる時代です。宅配便の取扱物量が増加するのも理解できますし、今後も当面、増加していくものと思われます。

(国土交通省発表資料を元に当社にて作成)


現場社員の着想で実現した「スキー宅急便」と「ゴルフ宅急便」

宅配便のサービスは路線便などと比較して実に多種多用です。単に荷物を運ぶだけであった宅配便に新たな付加価値をつけたサービスがあります。1983年にヤマト運輸が導入した「スキー宅急便」と翌年に導入した「ゴルフ宅急便」です。

今でこそ、当たり前のサービスですが、当時は斬新で衝撃的でした。時はバブル期より少し前ですが、バブル期のスキーとゴルフ人気に後押しをされて飛躍的に荷扱料が延びました。それまでスキー板に関しては自家用車もしくは電車で持参していました。従って、スキー宅急便は学生などの自家用車を所有していないユーザーにとっても大きな味方となりました。これにより長尺の板を担いで電車に乗る必要もなくなったわけです。

ゴルフ宅急便は、「ゴルフ場に電車を利用して手ぶらで行く」という選択肢を生み出しました。今までは自家用車の乗り合いで誰かは飲酒ができないということが普通でしたが、電車で行けば皆が飲めます。ちょっとした工夫ですが、多くの人の利便性が飛躍的に向上し、「ちょっとした幸せ」を皆が手にしたわけです。

ちなみにこちらのサービスはヤマト運輸の長野の社員の方が思いついたそうです。冬場の長野は荷物が激減するため、代替えの荷物はないかと思案していた所、目の前にスキー板を担いだ客が歩いていたそうです。ただの逸話かと思いきや、この発想は実に物流的な考え方です。

物流ではシーズンによって繁閑があります。例えば、飲料などは夏場に爆発的に売れます。アパレルも冬場は嵩張るものが多く出ます。業界的には「裏と表」という言い方もしますが、物流業者は常にこの「裏」をどう埋めるかを考えています。まさにこの本能に基づいた素晴らしい発想だと思います。


日本に流通革命を起こした「クール宅急便」

日本の流通の仕組みを大きく変えたサービスがもう一つあります。「クール宅急便」です。クール宅急便は1988年にヤマト運輸より開始されました。それまで、保冷品はチャーター便などで輸送するしか手段がありませんでした。ヤマト運輸は独自の保冷剤を開発し、各支店、営業所に冷蔵、冷凍庫を装備することで、コールドチェーンを確立しました。

今でこそ産地直送などという言葉は当たり前ですが、新鮮な食材を少量でも輸送可能にしたことは画期的でした。日本全国津々浦々の新鮮な食材が1~2日後には東京で食べることができるようになったのです。特に外食産業に対する影響は計り知れなく、クール宅急便導入前とは比較にならないほどアイテムが増加しました。クール宅急便は世界最高レベルと言われる食の都、東京や大阪を支えていると言っても過言ではありません。

また、忘れてはならないのが、地方生産者のビジネススタイルをも変えたということです。従来は地元の農協や卸を通してしか売買できなかったものが、直接販売するという選択肢を与えました。新鮮で、良好な商品を生産している生産者は独力で勝負をすることができるようになりました。これによる地方への経済効果は相当のものがあります。

保冷商品を扱うには、多大な設備投資と維持費が必要となります。現在、保冷品を大々的に取り扱っている小口配送業者は宅配大手の3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)です。一部路線便業者もサービスを提供していますが、規模は比較になりません。また、宅配大手3社にも実力差はあり、このカテゴリーではパイオニアのヤマト運輸が圧倒しています。ただし、EC市場の拡大により生鮮品の輸送ニーズも高まっており、これに追随する形で各社ともクール便の強化をする動きが見られます。

このクール便サービスですが3社を比較すると、以下のように微妙にサービスの違いがあります。

  •   クール便は-15℃~10℃前後の低温で配送をするサービスであり、ヤマト運輸、佐川急便が提供
  •  日本郵便のチルドゆうパックは0℃~5℃の温度帯のみに対応しており、冷凍は非対応
  • 各社サイズは常温と比較して制限があるが、日本郵便がもっとも大きい150サイズまで対応、同一納品先へ出荷する際には割引制度あり

日本郵便については郵便局へ持ち込むと120円/個の割引、同一納品先へ複数個口を出荷する際には60円/個の割引をしてくれます。郵便局が多い、地方の生産者には強い味方ですね。

ちなみに宅配便のクール便は定温一貫輸送では無いため、*³予冷や梱包に注意をする必要があります。積み下ろし時など一時的には常温に晒される可能性もあるため、梱包箱の中の保冷剤や氷、梱包箱の素材等は十分に注意をしてください。


貨物追跡サービスもヤマトの宅配便がスタート

宅配便が先行して開発した仕組みの中に貨物追跡があります。1980年にヤマト運輸がNEKO-POS(バーコードリーダー付簡易入力機)を導入し、各営業所で荷物情報の入力が可能となりました。その後、携帯型の*⁴POSが登場し、進化を遂げています。本来はトラブル発生時の問合せツールとして、自社内で荷物の所在を明らかにするためのものですが、ヤマト運輸はこれを顧客に開示するという点が斬新でした。

現在では主要な地点を通過する度に送り状のバーコードをスキャンし、通過履歴がホームページ上でも検索できるようになっています。これは携帯型の*⁴POS(バーコードリーダー)やベースでの自動仕分け機を導入したことによって、現場で簡単にスキャンができるようになったことによります。現在は、他社や路線業者でも同様の仕組みを導入していますが、宅配便は路線便と比較するときめ細やかに情報が把握できるようになっています。

また、最近ではLINEと連動して、発送連絡や納品時間の変更ができるサービスも提供しています。これにより、不在時配達を減少させる効果も期待されます。更に、貨物追跡が可能になったことで、今どこに荷物があるかを把握できるようになり、紛失時にどこで無くなったのかを推測することも出来るようになりました。輸送制限内の高額品(30万円/個口まで)や大切な荷物の所在を消費者自身が確認できることで、安心感を提供しています。


EC時代に顧客の細かなニーズに対応し、宅配サービスは更に多様化

一人暮らしの利用者や夜遅くまで仕事がある利用者用に、荷物の受け取りをコンビニエンスストアや宅配ロッカーで受け取れるサービスも導入されています。これにより、昨今大きな問題となった再配達の減少も期待できます。昔は職場で荷物を受け取っていた方もいましたが、昨今はコンプライアンス面からもなかなかそういう訳にはいきません。利用者には大変ありがたいサービスといえます。

時代にあわせて、送り状をスマホ経由で発行したり、オンライン決済が出来るようにもなっています。あわせて、コンビニへの持ち込みや宅急便センターへの持ち込みをした場合は割引を適用(登録制サービスの場合)しています。これにより集荷の手間を省き、ドライバーの作業工数を削減することもできます。

ECの増加により、小型品を輸送するニーズが以前にも増して高まりました。例えば小さな封筒には入らないが、60サイズの段ボールでは大きすぎるという商品です。女性用の小型化粧品やコンタクトレンズ、イヤホンなどを想像して頂ければと思います。これらに対応するため、ヤマト運輸は「ネコポス」、日本郵便の「ゆうパケット」という小型荷物向けサービスを展開しています。

料金を荷受時に支払いたいという利用者のために、*⁵代引きサービスがありますが、こちらの決済をクレジットカードや電子マネーでできます。尚、このサービスは現在、ヤマト運輸と佐川急便で対応しています。

さらにECの増加により新たに誕生したサービスとして「*⁶置き配」があります。現在、一部のEC事業者が展開しているサービスです。このサービスは、EC事業者(販売者)と消費者(購入者)が置き配の実施に対し、合意していることが前提となります。

以前は、そもそも配送会社側が配達先から受領印をもらわずに荷物を置き去りにするなどということは概念上存在しませんでした。通常、物流業者にとって、配達先が無事荷物を受け取ったことを確認した段階で全ての任務が終了するからです。また、商品を置き去りにし、盗難や破損が発生した場合の責任を配送会社が負担することはあまりにもリスクが高すぎます。以上の理由から先の前提が必要となるわけです。

しかしながら、この置き配は不在者による再配達を減少させる効果もあり、双方のニーズが上手くマッチしている側面もあります。今後は宅配ボックスなどの配備も増えていくと考えられますので、このサービスがより拡大する可能性はあります。

この様に宅配便は消費者の生活様式の変化やニーズに対していち早く対応をしてきました。今後も新たなサービスが展開されていくと思います。


宅配便の料金は、「サイズ」✕「発着地」で決まる

このように様々なサービスが存在している宅配便ですが、料金はどのように決まっているのでしょうか。

宅配便の料金はサイズ(荷物の3辺の長さの合計)とエリア(行き先)別に設定されています。料金は1個口(ケース)あたりいくらという計算になります。2個口になれば2倍、3個口になれば3倍になります。非常にシンプルでわかりやすい単価設定です。

この単価ですが、ホームページで記載されている単価と法人契約の単価は異なります。法人契約の単価はホームページに記載されている単価の半分以下です。また、法人契約の単価は企業によって異なっており、この単価は、宅配会社の各支店や営業所が個別に決定しています。

まれに全国一括や複数の支店、営業所を纏めた統一料金で契約をしているケースもありますが、ほとんどが出荷拠点の最寄りの支店や営業所毎との契約になります。ちなみにこの単価を決める要素はいくつかあります。

〈単価を決める要素〉

  • 出荷物量
  • 地域性
  • 支店や営業所の都合
  • 輸送する荷物の特性など

出荷物量は多いほど普通は安くなります。また、地域性でいうと物流集積地は他社との競争が厳しいことや全体取扱物量が多い為、固定経費を抑えて運営ができるなどの理由で割安な単価が出やすくなります。

一方で物量はそれほどでもないけど、地元の有名企業であるとか、法人のまとまった荷物があまりない地域は支店や営業所の判断で割安な単価設定になっているケースも見受けられます。逆に医薬品や精密機器など破損のリスクが高い商品を取扱う企業は少し割高に設定される場合もあります。

法人向けはこんなに安くできるならば、個人向けももっと安くしてくれれば良いのにと思うかもしれませんね。しかし、この法人向け荷物は重要な役割を果たしています。法人向けの荷物はある程度量がまとまっており、定期的に出荷され、行き先もおおよそ決まっています。つまり、安定的な「*⁷ベースカーゴ」となり、これらの法人向けの荷物と一緒に個人の荷物が輸送されています。仮に法人向けの荷物がなくなってしまうと、不採算になって、配達できないエリアが出でてしまうかもしれません。もしくは個人向けの配送料金がより高額になる可能性もあります。

法人向けの荷物は宅配便のきめ細かいサービスを維持するために基礎的な役割を果たしているのです。そのため、個人向けよりも割安な単価設定がされています。

料金の仕組みについては別コラム「輸送モードの選択について」で詳しく述べていますので、そちらも参考にしてください。

プロレド・パートナーズではクライアントの物流診断を行う際に、この「単価を決める要素」と当社のデータベースを元に評価を決めています。自社の契約単価が適正なのかわからないという場合は是非ご相談ください。


全国どこでも、翌々日までには配達できる仕組みとは?

そもそも宅配便がどの様に運ばれているのか、皆さんは御存知ですか?最短で翌日、遅くとも翌々日には日本中の大部分に到着する、宅配便の基本的な輸送方法をご説明します。

まず、皆さんがコンビニに持ち込んだり、自宅で集荷してもらった荷物は最寄りの営業店に回収されます。ヤマト運輸と日本郵便は専用のカゴ台車に荷物を載せて運びますが、佐川急便は基本的に直積みです。その後、地域を管轄している「ベース」と言われる大型の支店に持ち込まれ、方面別に仕分けをされた後に、*⁸幹線便に積み込まれます。

ベースには1日何百台という大型トラックが集まります。特に夕方から夜間のベースは正に「戦場」です。センター内でも次々と荷物が降ろされ、各方面別に仕分けられた後に次々と幹線便に積み込まれていきます。一般の方はなかなか目にする機会はないと思いますが、正に物流のダイナミックさを感じられる光景です。

幹線便は大きく分けると長距離便と近距離便に分けられます。首都圏近郊のベースであれば、関西方面や東北方面などの遠距離便は21時ぐらいには出発します(これを幹線切り離しといいます)。
次にベース近郊都道府県の荷物であれば、23時ぐらいまでに順次出発します。なお、幹線便については*⁹傭車と言われる協力会社の車両も活躍をしています。夜間に高速道路の左車線を走行している大型トラックにはこの幹線便が多く含まれています。

その後、幹線便は配達先を管轄するベースに到着し、各営業店別に仕分けをされます。早朝にはベースから各営業店に荷物が運ばれ、営業店で配達ルート毎に仕分けが行われた後に配達車両に積み込まれます。そして、配達ドライバーから皆さんの手元に荷物が届くことになります。

〈宅配便の輸送ルート例〉

宅配便の輸送ルートの例


翌日配送分の集荷時間のデッドラインは16時~18時頃

法人の場合、集荷の時間は基本的に16時~18時の間が最も多いと思いますが、最近、厳格化されていると思います。

仮に、集荷が遅くなると、ベースから出発する幹線便に載せられなかったり、ベースの作業員を何十人、何百人と待たせることになります。そして、最も怖いのは、時間に間に合わせようとする作業員や幹線便のドライバーが事故を起こしてしまうことです。働き方改革の影響と安全面への配慮から厳格化しているということを利用者側も理解していただきたいと思います。

また、宅配便というのは言うまでもなく多数の荷主の荷物を混載することで成り立っています。
従って、自分が遅れると、他人の荷物も遅れる可能性が高いということを意味します。集荷時間リミットの厳格化はこの様な背景によるものです。皆さんは集荷時間をこの様な見方で考えたことありますでしょうか?


“宅配クライシス” は “明日の我が身”

「宅配クライシス」という言葉を聞いたことがありますか?

EC関連の荷物が爆発的に増加し、セールスドライバーの作業負荷が大きくなりすぎたため、長時間労働などが大きな問題となりました。

また、セールスドライバーのなり手も不足し、労働人口の減少と荷物量の増加がダブルで宅配便業界に襲いかかりました。実はこの問題ですが、現在も完全に解決されているわけではなく、現在進行中の問題です。

一時代前の配達ドライバーは働けば働くほど収入が得られ、セールスドライバーをやりながら貯蓄を行い、やがて独立して事業を立ち上げる人も沢山いました。実際、セールスドライバーがその会社で一番優秀と揶揄されるぐらいでした。

ところが、長時間労働などのコンプライアンスの観点から労働時間が厳格に管理され、ドライバーの収入が減少しました。さらに、過剰な価格競争により、法人の契約料金は格安となり、荷物と労働時間は増えるが、収入は増えないという悪循環が起きます。

当然、ドライバーの給与は上がらないので、退職者は増加し、新規採用も減少することになりました。更にこれをカバーするために社員はハードワークを強いられ、基幹要員も次々と離職や退職することになりました。正に「クライシス」です。荷物を運ぶ人がいないのですから。以上の状況から各社は2017年春頃から大口のEC関連事業者を先行して一斉に値上げに踏み切りました。また、値上げに応じてもらえない荷主に対しては取引停止を行うほど強硬なものでした。

各社の業績は改善し、従業員の待遇も改善された様ですが、他の業界の人間がこぞって魅力的と思うほどの変化は起きていません。給与も劇的に上昇した訳でもなく、業務内容は相変わらず激務です。新規採用が劇的に増加しておらず、高齢化と労働人口が減少していくことを考えるとクライシスは当面継続すると考えられます。

ただ、何かと非難をされる経営側も手をこまねいているわけではなく、先に述べた再配達の減少策や時間指定の緩和、DX化を進めることで対策を打とうとしています。


宅配便の進化は止まらない

来たるべき高齢化と労働人口の減少に対して、宅配便業界も様々な取組みをしています。

例えばドローンを使用した配送実験です。ヤマト運輸では米国企業と共同開発を進めており、日本郵便も国内企業と業務提携を結んでいます。ただし、ドローンについては大都市圏というよりは地方や離島などで能力を発揮するでしょう。また、一度に大量の荷物を輸送する場面には適していないため、まずは医薬品や生活必需品といった優先順位の高いものの輸送に使われていくと考えられます。

宅配便でもっとも人手を割くのは言うまでもなく、ラストワンマイルの配達です。この部分については、配送車両の自動化と配達ロボットの導入が進められています。配送車両の自動運転については実用化に向けて研究が進められていますが、完全自動化まではまだまだ壁が高い状況です。特にトラックとなるとなおさらというところでしょう。各自動車メーカーやベンチャー企業がこぞって開発を進めていますが、思いの外、進捗が遅く、期待通りに進んでいません。

一方で配達ロボットについては2017年から日本郵便がZMP社と配達ロボットの実証実験を進めています。同様に佐川急便もソフトバンク社と実証実験を進めています。可能性だけの話をすれば、配達ロボットの方が先に実現しそうな気配です。例えば、商業施設での館内配送や決められたエリア内であれば、早期に導入が可能なのではないと思われます。しかし、この分野の取組について日本は世界よりかなり遅れており、配達ロボットについては既に海外では複数の国に導入されています。やはり、厳しい法令や最初から完璧を目指す日本的な考え方も障害となっているのかもしれません。

また、自動化や機械化とは別に拠点と運営の見直しも行われています。ヤマト運輸では、ゲートウェイ構想として、関東、中部、関西にそれぞれ大規模な拠点を新設しました。幹線便の走行を夜間ではなく、日中に各拠点間を頻繁に走行させることで、大都市圏での当日配送を可能にするとしています。また、日中の走行であることからドライバーの長時間労働の防止や負荷軽減、労働力の確保にも寄与するとしています。


越境ECまで視野に入れた物流体制が必要

更に今後も日本国内から海外へ、海外から日本への宅配便が増加していくと思われます。いわゆる“越境EC”といわれるものです。

日本製の商品には海外で人気の高いものが多くあります。以前は海外で販売しようとすれば、色々と面倒な手続きを踏む必要がありましたが、現在は営業や受注もインターネットを使えば実際に相手と会わなくても簡単に行えます。

特に生鮮品や酒などは海外でも人気と信頼性が高く、今後も輸出量は増加していくでしょう。まさに生産者にとっては新たなビジネスチャンスです。

国際宅配便については、国内企業であれば、大手宅配便3社が対応しており、グルーバル企業でもDHL、FedEx、UPSの大手企業が進出しています。国内の法人ではグローバル企業を使用しているケースが多いため、今後国内の宅配便3社は日本発の荷物を中心に新規獲得を目指していくことになると考えられます。


アマゾン、楽天、メルカリなどのメガ流通企業が第4の宅配便業者として出現

ここまで宅配大手3社を中心に話を進めてきましたが、この3社の独占状態を打破しようとする動きも見られます。

例えばアマゾンなどは独自の配送ネットワークを構築し、併用をしています。また、エリアを限定して個口配送を行う配送会社も出てきています。

しかしながら、インフラを今から整備し、宅配便業界へ参入していくのは相当の困難を伴います。楽天が自社配送網ではなく、日本郵便と手を結んだ理由の一つもそこにあると思います。恐らく、今後は、人口が密集する大都市をカバーするローカル宅配便業者が増加していくものと思われます。


まとめ

ここまで宅配便について、色々な側面からお話をしてきました。

宅配便は日本の物流の花形的存在です。世界的に見てもこれほど質の高い物流サービスを提供している国は少ないでしょう。しかしながら、今後は高齢化と人口減少、それによる人手不足と戦うことになります。この困難をどのようにして乗り越えていくのか、その姿が日本の物流の将来を形作っていくと思います。

プロレド・パートナーズでは用途に応じた宅配便の使用方法などもアドバイスをしています。物流コストを下げたいが、どの宅配便業者を使えば良いのかわからない、現状の契約単価が適正なのかわからないなどのお悩みがある場合は是非プロレド・パートナーズにご相談ください。


*本コラム内の用語

*¹路線事業=不特定多数の荷主の荷物を積み合わせて、決められた区間を輸送する事業
*²小倉昌男氏=ヤマト運輸創業家2代目、宅急便の産みの親、次々と新サービスを展開、国の様々な規制とも戦った。物流業界伝説の経営者、関連著書多数
*³予冷=事前に十分に冷やしておくこと
*⁴POS=Point of Sale(販売時点情報管理)
*⁵代引き=荷物の受け渡し時に購入商品の精算を行い、その精算業務を宅配業者が代行すること
*⁶置き配=荷物を対面ではなく、玄関前、車庫などいくつかの指定場所に商品を置いておくサービス、受領印の授受は行わない
*⁷ベースカーゴ=トラックなどで輸送をする際にメインとなる荷物
*⁸幹線便=物流拠点間を結ぶトラック
*⁹傭車=自社ではない、他社(協力会社)の車両


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