SCM/物流

物流改革の鍵を握る課題とその解決策について詳しく解説

近年、物流業界を取り巻く環境は急速に変化しており、労働力不足やデジタル化の遅れ、環境規制の強化など、多くの課題が浮き彫りになっています。こうした課題は、物流企業だけでなく、物流を利用する荷主企業にも影響を及ぼすため、適切な対応が求められています。

本コラムでは、物流業界が直面する課題を整理し、実施すべき具体的な解決策を解説します。物流改革を進めるために必要な視点や実践的な取り組みにとして、ぜひ参考にしてください。

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物流業界の重要性と変化

物流業界は、経済と社会の基盤を支える重要な役割を果たしており、その影響は私たちの日常生活から企業経営に至るまで広範囲に及びます。近年ではコロナ渦のEC(電子商取引)拡大やアフターコロナにおける店舗への急速な回帰など、物流に求められる役割やサービスなどの変化とその対応は難易度を増しています。世の中の変化に迅速かつ効率的に対応する能力は、企業の競争力を直接左右する重要な要素となりました。

更に、物流業界の環境も劇的に変化しており、多くの課題が表面化しています。国内では「2024年問題」と呼ばれるトラックドライバーの労働時間規制強化による労働力不足や、物流業界に従事する人材の高齢化が顕著となっています。さらに、国際的な課題である地政学的リスクの増大、気候変動による環境規制強化が加わり、企業はかつてないほど複雑な状況に直面しています。

物流業界が直面する5つの課題

物流業界が直面している課題として以下5つが挙げられます。

  1. 労働力不足と「2024年問題」
  2. デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れ
  3. 環境規制とサステナビリティ
  4. 地政学的リスクと自然災害
  5. 消費者ニーズの高度化

それぞれ詳しく解説します。

1. 労働力不足と「2024年問題」

日本の物流業界が直面する最大の課題の一つが、「2024年問題」です。これは、2024年4月から物流業界にも改正労働基準法が適用されたことにより、トラックドライバーの年間労働時間が制限されました。改正労働基準法は、長時間労働の改善を目的としたものですが、トラックドライバーの総運転時間が制限されることによる、輸配送キャパシティの不足が懸念されていました。2024年は、日本国内全体の物量が想定より少なかったことから、キャパシティが深刻な問題になることはありませんでしたが、需給のひっ迫やドライバーの待遇改善されたことにより、輸配送コストは増加しました。

2024年問題については以下コラムに詳しく解説しています。

さらに、人口減少と高齢化が進む日本では、物流業界への若年層の参入が減少しており、人材確保が深刻な問題となっています。特に地方では、若年層の人口流出と高齢化が進み、新規採用が難しい状況に加え、需要の高い長距離輸送の労働負担が大きいことも離職率を上昇させています。さらに、地方では輸送効率が低く運賃も低迷しており、収益性の確保が課題となっています。このような状況は、中小規模の運送業者にとって特に厳しく、企業の存続に関わる重大な課題です。

物流業界への労働力の参入減少は、物流企業のドライバーに限りません。荷主企業の物流担当者(物流部の人材)も高齢化が進んでいます。労働力の不足という問題だけでなく、知見や経験の属人化というリスクも顕著になりつつあります。

2. デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れ

次に挙げられるのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れです。物流業界では、AIやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用し、効率化が進んでいる企業もある一方で、全体としては技術導入が遅れています。荷主企業と物流企業間の連携方法も、オフライン(FAXやメールでの連携)が根強く残っている状況であり、特に物流企業から荷主企業に対する請求のデータ化の遅れは顕著です。未だにデータ化の難しい紙(PDF含む)の請求書が主流で、明細が無いケースも数多くあります。このようなDX化の遅れは、予測や計画、管理の精度改善の弊害となり、物流効率にも影響を与えています。

また、同様に解決すべき課題として認識されているトラックの積載率についても、紙ベースの運転日報にのみ記録されており、データ化されていないケースもあります。そのような場合も同様に、傾向の分析が進まず物流好悪率を改善するための原因特定が困難となっています。

DXが進まない背景として高額な初期投資に対する懸念やデジタル人材の不足による、新しいシステムの導入や運用がスムーズに進まないなどのケースが多く見られます。さらに、多くの企業ではDXの導入が試行段階にとどまり、現場レベルでの本格的な活用に至っていないことも大きな課題です。これらの要因が重なった結果、国際競争力の低下や新しい消費者ニーズへの対応力不足を招き、業界全体にとって大きなリスクとなっています。

物流DXについては以下コラムで解説しています。

3. 環境規制とサステナビリティ

気候変動への対応は、物流業界における重要な課題の一つです。国や国際機関が推進するESG(環境・社会・ガバナンス)の重視や、カーボンニュートラルの実現目標は、多くの企業にとって無視できない要素です。しかし、環境対応型物流を実現するためにはコストが伴うことから、特に中小企業にとっては優先度が低くなっている傾向にあります。

具体的な環境対応の取り組み例として、電動トラックの導入や再生可能エネルギーを活用した物流センターの設置が挙げられますが、これらはまだ一部の大企業で取り組まれているに過ぎません。環境負荷を低減する取り組みは、規制対応のみならず、企業イメージの向上や顧客からの支持を得る手段としても重要です。

4. 地政学的リスクと自然災害

物流業界は、拠点の国内外を問わず地政学的リスクや自然災害による影響を受けやすい産業です。近年では、新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ危機、貿易摩擦などが国際物流に多大な影響を及ぼしました。実際に、供給網が寸断され、製品や原材料の調達が遅延するといった事例が多発しています。特に特定の国や地域への依存度が高い企業は、供給リスク等の不測の事態に見舞われる可能性が高いため、リスク分散型の物流ネットワークの構築が求められています。

また、台風や地震、積雪など自然災害の激甚化による物流網の被害も問題となっており、災害時の迅速な対応力を備えた物流体制が不可欠です。

5. 消費者ニーズの高度化

先述した新型コロナウイルス等に影響を受けた消費者の行動変容は、物流業界に対し新たなプレッシャーを与えています。ECの普及により、ラストワンマイルの即日配送や時間指定配送といった高度なサービスが求められています。このような消費者ニーズに応えるためには、より効率化された配送ネットワークに加え、それを実現するための様々な追加コストが必要となっています。

特に都市部では、以前にも増して物流のサービスレベルが企業間の競争力に直結するようになり、物流効率化への必要性が更に高まっています。

物流改革に向けた解決策

ここまで物流業界が直面する課題について解説してきました。次に、物流改革に向けた解決策について詳しく説明します。

効率化のためのプロセス見直し

物流改革のためには物流プロセス全体を可視化し、非効率な部分を洗い出すことが不可欠です。輸送ルートの最適化や共同配送の導入、倉庫配置の見直しなどの検討はもちろんのことですが、物流領域だけを改善しても効果には限界があります。ビジネスの構造そのものから見直すことで、顧客が求めるサービスレベルを維持しつつ、効率化を図ることが可能です。これまで長らく、ビジネス要件は絶対的なものとして物流をコントロールしていましたが、現在ではそういった通例も少しずつ変化し始めています。物流も含めたビジネス全体としての意思決定と効率化が必要となっています。

デジタル技術の導入

AIやIoTを活用したデジタル技術の導入は、物流改革における重要な要素です。AIによる需要予測や輸送計画の最適化は、効率化とコスト削減に大きく寄与します。また、モノをインターネットに繋ぐ技術であるIoTは、トラックに実装することで、輸送の可視化・効率化が図れるだけでなく、車両やドライバーのコンディションをモニタリングした安全な物流にも寄与させることができます。

さらに、AIやIoTの活用により得られた高度な情報を物流管理システム(TMS、WMS)と連携することにより、物流全体の流れを効率的に管理することができ、サプライチェーン全体の透明性を高め、迅速な意思決定を可能にします。

サステナブル物流の推進

環境対応型物流を実現するためには、電動車両や再生可能エネルギーの導入に加え、環境負荷の少ないパッケージングやリサイクルの促進も重要です。また、モーダルシフト(複数輸送モードの活用)を推進することで、輸送効率を向上させながら環境負荷を軽減できます。これらの取り組みは、環境規制に対応するだけでなく、消費者や社会からの支持を得る手段としても有効です。

まとめ

物流業界は、労働力不足、DXの遅れ、環境規制、地政学的リスク・自然災害リスク、消費者ニーズの高度化といった多面的な課題に直面しています。これらの課題を克服し、持続可能な物流体制を構築するためには、業界全体での協力が必要です。

プロレド・パートナーズでは、こうした課題に対応する荷主企業向けに、一貫した物流改革の支援を提供しています。無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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