環境

CDPとはどのような組織?環境問題に対して何をしているのか解説します

「CDP」という言葉をご存じでしょうか。CDPとは、気候変動などの環境分野に取り組む国際NGOの名称で、近年その存在感を増しています。機関投資家などもCDPによる企業の情報開示を注視しており、企業がESG投資を呼び込みその価値を高める観点からもCDPは避けて通れなくなりつつあります。

今回は、そのCDPの目的とその取り組み内容について解説します。環境経営への取り組みを進めている企業にとっては大変有益な情報ですので、ぜひ最後までお読みください。

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CDPとは?

CDPは、英国を拠点とする非政府組織(NGO)であり、企業や自治体が環境へ与える影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しています。

2000年に「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」として発足し、日本では、2005年より活動しています。世界各国の企業に向けて気候変動・水セキュリティ・森林・生物多様性の4つの環境に対する取り組みについての質問書を送付し、その回答内容によりA・A-・B・B-・C・C-・D・D-・F(Fは無回答)の9段階で評価するものです。

 

CDP質問書に回答するメリットとは?

近年は、このCDPによる評価が環境情報開示のグローバルスタンダードとなっており、投資家や企業、政府関係者など様々なステークホルダーが各企業の回答内容およびスコアを注視しています。 CDPでは2021年に全世界で13,000社以上の企業から回答書を収集・公表し、全世界で800を超える機関投資家によってその活動がサポートされています。

日本においては、2009年より500社に向けて質問書が送付されてきましたが、2022年には対象を大幅に拡大し東証プライム市場に上場する企業全社(1841社)へ質問状が送付されています。大手企業にはサプライチェーン全体での環境貢献が求められており、サプライヤーの選定にあたっては、CDPでの環境評価を基準とするケースも増えてきました。

このように、今後の企業経営にとってCDP質問書への回答とスコア向上への取り組みは避けて通れないものとなっています。

参考:CDP公式HP
参考:CDPジャパン公式HP

 

CDPの活動領域

CDPは現在「気候変動(Climate change)」「水セキュリティ(Water)」「森林(Forests)」「生物多様性(Biodiversity)」の4つの分野を質問書の対象としています。この4つの環境問題に対する取り組み内容を問う文書を企業や自治体に向けて送付し、その回答結果をスコアリング評価して結果を公表しています。

今後は2024年頃を目途に、水産資源やプラスチック汚染などに関する「海洋」についての質問項目も追加予定です。質問は単なる環境活動への取り組み内容に留まらず、企業・自治体の組織や意思決定方法のプロセスなど多岐に渡ります。

2021年の国内のCDP評価では、花王株式会社と不二製油グループ本社株式会社の2社が、気候変動・水セキュリティ・森林の3つの質問書全てでAランクであった企業(トリプルA企業)として高い評価を得ています。以下にそれぞれの取り組みと質問書の内容について解説をします。

参考:CDPジャパン 質問書

気候変動(Climate change)

地球温暖化を抑制するための取り組み状況を評価する、「気候変動に関する質問書」では、現状のGHG(温室効果ガス)排出量及び今後のSBT(科学的根拠に基づく排出削減目標)基準を適用した削減目標の策定状況などについての報告が求められます。

また、再生可能エネルギーの導入状況やカーボンプライシングによる排出量抑制など、カーボンニュートラルに向けての取り組み状況についても評価の対象となります。

【気候変動(Climate change)質問項目】

C1 ガバナンス
C2 リスクと機会
C3 事業戦略
C4. 目標と実績
C5 排出量算定方法
C6. 排出量データ
C7. 排出量内訳
C8. エネルギー
C9. 追加指標
C10. 検証
C11. カーボンプライシング
C12. エンゲージメント
C15. 生物多様性
C16. 最終承認
SCサプライチェーン

※C13,14はセクター別質問の為、該当する企業としない企業がございます。
参考:CDPジャパン 気候変動質問書2022

水セキュリティ(Water)

近年、世界的に干ばつや洪水等の水に関連する事象が増加傾向にあります。さらに、人口増加や経済成長、消費パターンの変化に伴い、世界の淡水需要は将来的に大きく増加することが見込まれている一方で、気候変動に伴う降雨パターンの変化や氷河の後退による淡水利用可能量の減少が懸念される地域があるため、持続可能な水資源の確保に関する企業や自治体の取り組みは非常に重要です。

CDPの「水セキュリティに関する質問書」では、環境負荷の低減策としての水効率の改善や水の再生利用、洪水対応計画の策定、企業活動における水資源リスクへの対応策としては、サプライヤーの多様化やBCPへの反映などが評価されます。

【水セキュリティ(Water)質問項目】

W1 現状
W2 事業への影響
W3 手順
W4 リスクと機会
W5 施設レベルの会計
W6 ガバナンス
W7 事業戦略
W8 目標
W9 検証
W10 最終承認
SWサプライチェーン

参考:CDPジャパン 水セキュリティ質問書2022

森林(Forests)

森林は光合成により大量の大気中二酸化炭素を吸収し、地上部および地中に貯蔵するため、気候変動(地球温暖化)を緩和する重要な役割があります。「森林に関する質問書」では、木材・パーム油・畜牛品・大豆の項目について、それぞれの企業活動の中での調達による森林破壊リスクの検証や森林保護戦略について評価されます。

森林の減少・劣化につながる企業活動を減らし、持続可能な森林資源の活用に対する取り組み状況を評価しスコア付けをしています。

【森林(Forests)質問項目】

F1 現在の状態
F2 手順
F3 リスクと機会
F4 ガバナンス
F5 事業戦略
F6 実践
F7 検証
F8 障壁と課題
F17 最終承認
SFサプライチェーン

参考:CDPジャパン フォレスト質問書2022

生物多様性(Biodiversity)

CDPでは、今後「生物多様性」「土地利用」「海洋」「食料」「廃棄物」などのテーマが加わり、2023年からこれらを統合した1つの質問書を送付する予定となっています。

その第1段階として、2022年の気候変動質問書のC-15に、生物多様性の質問が新たに設けられています。

C15 生物多様性
取締役会レベルの監督(15.1)
生物多様性に関するコミットメント(15.2)
バリューチェーンへの影響(15.3)
生物多様性関連コミットメントにおける実践(15.4)
指標と実績の監視 (15.5)
他の生物多様性関連情報開示(15.6)

初年度でもあり、生物多様性の質問への回答は採点の対象外となっています。

参考:CDPジャパン CDP2022気候変動質問書「生物多様性」解説ウェビナー

その他

CDPでは、ここまで挙げた3つの環境問題の他に、2007年に「サプライチェーン(Supply Chain)」、2011年に「都市(Cities)」の2つのプログラムを開始しました。

サプライチェーン(Supply Chain)

CDPでは、それまで質問書での調査対象を環境への影響の大きい大企業を対象としていましたが、このプログラムでは大企業のサプライヤーを対象とし、企業とサプライヤー間の対話を促しています。

サプライチェーン全体における温室効果ガスの排出は、企業の直接のオペレーションの排出量の5倍以上になると言われています。そのため、企業はサプライヤーと協働して環境負荷の提言を協議する必要があります。このレポートは、調達規模が総計で3.6兆米ドルに達する125社の大手購買企業に開示要請した情報を基にしており、2020年度は8093社のサプライヤーが開示に応じています。開示要請に応じたほとんどのサプライヤーが気候変動に関しての自社取組み情報を提供しています。

森林と水セキュリティの分野では、事業との関係性の低いセクターも存在するため、回答を得られたサプライヤーは気候変動に比べると少数に留まっています。森林に関しては448社がこれに応じ、水セキュリティに関しては2449社がこれに応じています。

参考:CDPジャパン サプライチェーンレポート2020

都市(Cities)

前述の気候変動・水セキュリティ・森林・サプライチェーンが企業を対象としたプログラムであるのに対し、「都市(Cities)」は自治体を対象としたプログラムです。世界中の都市へ送付した質問書への回答を基に、その都市の気候変動対策に関する評価付けが行われ、結果が公開されます。

2021年は全世界で1100以上の都市・地域が回答し、このうち95の都市がA評価を受けています。日本では、京都市・東京都・横浜市の3都市がA評価を獲得しました。

参考:CDPジャパン CDPシティ:2030年に向けて

 

まとめ

今回はCDPの概要と取り組み内容について解説してきました。質問書が送付される対象企業および対象とするテーマも年々拡大し、特に大企業にとっては避けては通れないものとなりつつあります。

企業の環境経営への取り組みがCDPにより公正に評価され、それが市場の評価につながり企業価値に直結します。CDPへの参加は自社の取り組みを対外へPRする絶好の機会になるばかりでなく、社内で明確な目標を設定することによるモチベーションアップとコーポレートガバナンスの強化をもたらします。

プロレド・パートナーズでは、企業の環境経営の取り組みについてもコンサルティングを承ります。脱炭素への取り組みや再生可能エネルギーの導入についての検討の際には、プロレド・パートナーズへお気軽にご相談ください。

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