企業が環境問題に対して熱心に取り組むことが多くなってきた昨今、「SBT」という単語を耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか。環境問題に関するキーワードは、SDGsやESG投資、SBT、CDPなどアルファベットが並ぶので、意味をあいまいに理解してしまっている方も多いかと思います。
その中でも今回は、SBTとは何か、SBT認定取得に取り組むメリットなどについて解説します。
SBTとはなにか

まずは、SBTの概要や重要な指標となるRE100などについて解説します。
SBTの概要
SBT(Science Based Targets)とは、企業における温室効果ガスの排出削減目標のことです。
2015年のパリ協定で合意された長期目標を達成するために定められたもので、そこで掲げられた目標は以下の通りです。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を継続する
- 今世紀後半に人為的な温室効果ガス排出量を実質ゼロにする
パリ協定の目標を達成するには、国だけでなく民間企業の取り組みが欠かせません。
SBTの対象範囲
SBTでは、自社だけでなくサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を対象としています。
そのサプライチェーンとは次の3つに分類されており、原料調達から廃棄に至る企業活動全体での排出量削減が求められます。
- スコープ1:自社での燃料の燃焼や工業プロセスなど、直接的な温室効果ガスの排出
- スコープ2:他社から供給された電気、熱、上記の使用に伴う間接的な排出
- スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接的な排出(自社の活動に関連する他社の排出)

出典:環境省
SBTの運営機関
SBTは、以下の4つの機関により、共同で運営されています。
- CDP:投資家に向けて気候変動などの環境情報を提供し、企業に気候変動への対策を公表するように求めるNGO
- UNGC(国連グローバル・コンパクト):持続可能な成長を実現するための国際的な取り組み
- WRI(世界支資源研究所):地球環境や開発に関する政策研究や技術開発を行うNPO
- WWF(世界自然保護基金):世界最大規模の自然保護団体であるNGO
SBTは、「We Mean Business(WMB)」の取り組みの一つとして運営されています。WMBとは温暖化対策を推進している国際機関やNGOなどが連携するためのプラットフォームです。
WMBではSBTの目標とする温室効果ガス排出の削減だけではなく、再エネ100%や森林破壊の停止、短期寿命大気汚染物質の排出削減、水の安全保障の改善など、幅広い温暖化対策に取り組んでいます。
SBTと深く関係するRE100
温室効果ガス排出削減をするには、再エネ電力の活用が欠かせません。そのため、再エネ電力を活用するためのイニシアチブとしてRE100が世界的に影響力を持つ企業を中心に取り組まれています。RE100もSBTもWe Mean Businessの一環として取り組まれています。
RE100とは、事業で使用する電力を100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業連合のことも指します。
RE100の対象企業は、年間消費電力量が100GWh以上(日本は50GWh以上)であることが目安となっていて、認定要件は以下のように定められています。
- 目標年を宣言し、事業全体を通じた100%再エネ化にコミットする。もしくは既に100%再エネ化を達成していること
- GHG(温室効果ガス)プロトコルで定義される、すべての電力に関連するScope2及び発電に係るScope1を再エネ化すること
2014年にRE100の取り組みが始まってから、海外・国内ともに参加企業は増加しています。2022年8月1日時点で、日本では72社、海外を含めると376社が参加しています。

出典:環境省
SBTをかかげるメリット

環境問題にコミットし実行するには、設備投資やリソース確保など膨大なコストを伴う一方で、その取り組みによるメリットも多くあります。
環境問題に対して持続可能な企業だと外部にアピールできる
SBT認定を取得している企業は、科学的根拠を基にした目標を設定して、常に環境問題に取り組んでいる持続可能な企業だとアピールできます。
このような取り組みをアピールすることで、顧客や市民からの信頼を獲得できます。
SBT認定により、CDP採点に優位に働く
CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは、投資家に向けて気候変動などの環境情報を提供し、企業に気候変動への対策を公表するように求めるNGOです。
CDPは毎年、主要国の時価総額が高い企業に対して、環境対策に関する質問状を送付しています。企業からの回答内容は公表され、取り組みに対して点数が付けられます。SBT認定を取得していると、このCDPからの得点が上がります。
CDPの得点は投資家に対して、大きな影響力があります。高い得点を獲得すれば、世界中の投資家に「環境問題に積極的に取り組んでいる企業」だとアピールできるので、投資が集まりやすくなります。
サプライチェーン全体での排出量削減を促進する
先ほど解説したように、SBTが対象とする温室効果ガス排出削減は自社だけでなくサプライチェーンも含まれます。
サプライチェーンとは、原材料の部品や調達→生産→物流→販売→製品の利用→廃棄までの一連の連鎖です。サプライチェーンが環境を無視して活動をしていると、以下のようなリスクが発生します。
- 気候変動や価格高騰などによるサプライチェーンの寸断リスク
- 投資家や消費者などの評判や風評のリスク
- 法令やコンプライアンスなどの規制リスク
SBT認定企業がサプライヤーに対して温室効果ガス排出削減を働きかけることにより、上記のようなリスクの低減が可能です。実際にいくつかのSBT認定企業が、サプライヤーに対してSBT目標の設定を求めています。
- 大和ハウス工業:購入先サプライヤーの90%にSBT目標を設定させる
- 住友化学:生産重量の90%に相当するサプライヤーに、科学に基づくGHG削減目標を策定させる
- イオン:購入した製品サービスによる排出量の80%に相当するサプライヤーに、SBT目標を設定させる
このように大手企業がサプライヤーに対してSBT目標の設定を働きかけています。事前にSBT認定を取得していれば、SBTに関する顧客からの要望にすぐに対応可能です。
省エネ、再エネ、環境貢献製品の開発など脱炭素化の取り組みを推進できる
SBTの目標は脱炭素化のために大きな目標を定めるため、社内で省エネ、再エネ、環境貢献製品の開発など、積極的な取り組みを推進できます。脱炭素化の取り組みを推進することにより、省エネによるコスト削減・勤務体制の効率化による働き方改革・環境に配慮した製品による新たな事業モデルなど、社内でイノベーションを起こそうとする機運が高まるでしょう。
SBTに認定されている企業は1604社

2015年にSBTが発足して以来、世界中で認定企業は増加し続けています。
2022年8月1日時点で、世界のSBT認定企業は1604社、2年以内にSBT設定をコミットしている企業は1861社、合計で3465社です。
そのうち、日本でのSBT認定企業は233社、コミット企業は56社で合計289社です。233社という認定企業数は、世界3位という高水準を維持しています。

出典:環境省「SBT 詳細資料」
SBTは幅広い業種の企業が認定を受けていますが、世界と日本では以下のような業種に特に多くみられます。
世界全体:専門サービス業・食料品製造業・不動産業
日本:電気機器業・建設業
まとめ
SBTとは、企業における温室効果ガス排出削減する目標のことであり、2015年に合意されたパリ協定の長期目標を達成するために定められたものです。SBTのような環境問題に取り組むには、企業にとって金銭的負担がかかりますが、SBT認定を取得することにより、環境問題への貢献やCDPからの評価アップ、サプライチェーンのリスク低減などのメリットも多く享受できます。SBTは幅広い業種や小規模な企業でも認定を取得可能です。
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